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改修に当たって考えたこと​

​動機1「直したいこと」編

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1.外部建具の断熱性能

 外廻りの建具は、マンションの管理規約で、サッシ枠・ガラス共に共用部分扱いとなっており改修できないため既存サッシの内側に、複層ガラスの入った建具を入れ二重窓にすることにしました。

既存サッシに使われている一枚ガラスと複層ガラスの断熱性能を比較しますと、表1の通りです。おおざっぱに言って、厚さ3ミリの1枚ガラスに比べ、12ミリの複層ガラスの熱の逃げる量は、6.0:3.4(57%)の割合まで下がります。

外窓(1枚ガラス)に内窓(複層ガラス)を設置して二重窓とした場合には、熱貫流率がおよそ2.0W/㎡・kになり、熱の逃げる量は、既存の窓(1枚ガラス)の1/3になる見込みです。

1枚ガラスと複層ガラスの熱の逃げる量の比較表

セントラル硝子 複層ガラスカタログより

樹脂製内窓の写真
木製内窓の写真

​左:樹脂製内窓、右:木製内窓

2.結露対策

開口部の断熱性能を上げることで、窓に発生する結露が抑えられます。結露しない外気温度を比較したガラスメーカの資料(表2)によれば、室内湿度60%の場合で、フロート板ガラス(1枚ガラス)の場合は、外気温8℃で結露が発生するのに対し、複層ガラス(FL3+A12+FL3)の場合だと、-5℃まで結露が発生しないことになります。

実際は、既存サッシの内側に木製建具(複層ガラス12mm入)を設ける場合は、木製建具の機密性などで結露の状況は変わると考えられます。とはいえ、2重に建具を入れるのですから、表2の複層ガラス(12ミリ)を超える結露対策効果は得られるだろうと考えました。

1枚ガラスと複層ガラスの結露しない外気温度の比較表

セントラル硝子 複層ガラスカタログより

 

また、室内湿度が高くなると結露の発生温度は高くなります。内装の壁・天井に左官仕上げする珪藻土や、床・天井に使用する吉野杉の無垢材は、調湿に優れた素材ですので結露対策になると考えました。

キッチンカウンター廻りの写真
3.間取りの見直し

①室内に洗濯物干し場を確保

 バルコニーに面した室内に、洗濯物干し場を設けようと考えました。元の食堂はバルコニー側にふくらんだ部分が90cmほどあったのでそこを使うことにし、朝食の時だけ使っていた食堂はなくし、キッチンの前にカウンターを設けて朝食に使うように考えました。

これで、洗濯物は太陽光線をしっかり浴びることができ、洗濯物が部屋の真ん中に干されることはなくなるでしょう。

物干しスペースの写真

②二人で使える書斎を確保

  私だけで使っていた書斎を、二人で使える机を作り付けて、二人で使える書斎にすることを考えました。

窓からの光りを分け合うために、窓から少し離して仕切り板(目隠し)を立てて、向かい合わせに机を並べる事にしました。ちなみに、手前を妻が使い、私は奥側を使います。

③二人それぞれのウォークインクローゼット

 和室は、リビングと引戸で仕切られ開け放つと一体利用できる部屋でしたが、そうして使うのは年に1~2度でした。そこで和室をなくすこととし、そのスペースの一部をさいて、二人それぞれのウォークインクローゼットを設けることにしました。持っている衣服が全て納まり、そこで着替えもできるスペースがあれば良いと考えました。

二人で使う机 の写真
ウォークインクローゼット2の写真
改修後の間取り

​改修後の間取り

従前の間取り

​従前の間取り

4.あふれ出した物品

①二人の本棚

 二人の本は、書斎の長手方向の壁全体に本棚を造りつけて、それぞれ納めようと考えました。

小さいを本置く上段は、奥行きの半分をパネルで嵩上げし、ひな壇的に2段収納できるようにしています。

②キッチンにパンチングの棚

 キッチン流しの、大きめの奥行き750mm(一般的には600mm)を利用して、正面の壁にステンレス製のパンチング棚を取付け、あふれる鍋類を納めることを考えました。

③パソコン用のカウンター

 朝食のためのカウンターをキッチンに面して作ることにしましたが、そのカウンターを外壁まで伸ばし、パソコンとプリンターのスペースにすることにしました。

書斎の二人で使う壁面本棚の写真
流し台の奥行を利用したパンチング棚 の写真
朝食用カウンターの奥にPCスペースがある写真。
5.寝室は柔らかい光に

 間接照明は、光源が直に目に入らず柔らかな光が得られます。従前のどの部屋も直接照明のシーリングライトでしたので、どこかで間接照明を取り入れたいと考えていました。

特にまぶしさを感じていた寝室に、間接照明を取り入れて、やわらかな光りを演出しようと考えました。杉の幕板の裏にテープライトを貼り付けて間接照明にすることを考えました。また、読書のためにナイトテーブルにスタンドライトを置き、補助照明とすることにしました。

これで、ホテルの寝室のような柔らかで陰影のある光り​で、就寝前の一時を過ごせるだろうと考えました。

間接照明の柔らかな光に包まれた寝室の写真
6.エアコンの冷媒管は隠したい

 居間のエアコン室内機は、窓際の排気ダクトを覆う壁に取り付けられていました。理想的にはエアコン室内機自体を隠せたら良いのですがなかなか造作が大変なので、せめて冷媒管だけは見せない様にしようと考えました。最短の冷媒管ルートを決め、そこに物入れを造って見えないように納めると同時に、メンテできるように考えました。

寝室は、さほど気にならないので以前のままで良しとしました。

物入の中に納めたエアコン冷媒管の写真

物入の壁パネルを取り外すと冷媒管が見える

7.その他直したいこと

 耐用年数を超えた機器は、新しいものに変えるしかありません。性能を落とさず、省エネで便利なものが条件になります。

それぞれの、機器の性能が上がり維持管理のしやすさにも配慮された製品が開発されていることを知ることになりました。

 ・給湯器やガスコンロ・換気扇・ユニットバスは、耐用年数は超えており取り替えよう。

​ ・開き戸は、できるだけ引き戸にすれば、開け放った時も邪魔になりません。

 ・トイレの照明は、人感センサー付にしよう。

 ・プリーツ網戸は、ロール式網戸にすれば清掃が容易になでしょう。

 ・玄関のドアは、夏の通風と冬の断熱性能を考慮した木製建具を入れよう。

​「やりたかったこと」編

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11.風の通り抜ける家にしたい

 風が通り抜けるためには、風の入り口・出口が必要です。共用廊下側が入り口とすればバルコニー側が出口となります。

バルコニー側は西南西に向いているので、その西日を遮蔽するために、普通のカーテン

やロールカーテンではなく、ブラインドを採用して西日を遮蔽しながら風を通そうと考えました。

共用廊下側は、廊下を通る人の視線を切りつつ風を通す事を考え、これもブラインドにしようと考えました。

バルコニー側のルーバーの写真

 従前の間取りは、バルコニー側に居間、共用廊下側に寝室があり、その間に和室と押入があって、風の道はありませんでした。そこで、和室を取りやめて造ったウォークインクローゼットに無双窓を設けて風の道を作ることににしました。そして、無双窓を背にソファーを置いて風を感じられるリラックススペースを造ろうと考えました。

ソファーコーナー の後ろにある無双窓の写真

 

  玄関には、網戸の入った木製建具を入れることで、玄関-廊下-居間の風の道を確保できると考えました。

玄関の網戸を組み込んだ木製内戸の写真
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​12.自然素材を活かした家で暮らしたい

木材)木材について調べ始めて、建築士であるのに木材についてほとんど知識がないことに愕然としました。そこで、PCで検索したりショールームなどに足を運ぶなどして懸命に知識をためこみました。

木材の現物見本を手に入れたいと思い見つけたのが、東急ハンズのDYIコーナにあった「無垢の木でできた葉書」。興味のある材種を一通り購入し触れてみました。

東急ハンズで買った無垢の木でできたはがき21枚の写真

また、木を活かした住宅のリノベーションや新築工事の完成見学会に、いくつも参加させてもらい木の使い方を学習しました。   最終的に、床は素足で生活する想定で、柔らかで板目の美しい吉野杉(厚さ30mm)のフローリングとし、天井の一部にも吉野杉の羽目板を選びました。また、居間の外廻り建具も吉野杉の框戸としました。(吉野杉を選んだのは、身近にいい木材産地があり「吉野杉」があったからです)

カウンター類は、所有していたミズナラの座卓に合わせてナラ材、洗面所や台所の扉は木目の美しいタモ材を使いたいと思いました。室内扉と枠廻りの材料は最期まで迷いましたが、外材である米栂(東急ハンズの「無垢の木でできた葉書」はなかったので木製品のショールームで見本を手に入れました)をシンプルな表情と安価さが気にいり、枠材に選びました。室内扉は、素朴な表情のシナベニアのフラッシュをベースに、引き手の部分に米栂の竪框を組み合せることにしました。その他に、居間の入口に大黒柱扱いで栗の六角柱を立てました。

これらの木材の選択で、全体として落ち着いた暖かい雰囲気が作れると考えました。

キッチン廻りの写真
杉の床材(厚30)を使った玄関の写真

珪藻土)自然材料の左官材料としては、珪藻土の他に漆喰塗りや土壁もあります。土壁にすれば蓄熱性能も期待できるようですが、マンションの改修には不向きと考え除外しました。漆喰と珪藻土の比較では、調湿性が高く施工性が良いよいのは珪藻土であると判断しました。メーカーから材料見本を取り寄せ触れてみることもしました。

無垢の杉と取り合わせた時の美しさは、雑誌やHPで確認できましたし、質感も含めて実際に完成見学会で確認できました。

 

少し頭を悩ませたのは、木材(造作家具を含む)と珪藻土の、目に見える面積のバランスです。木材の占める割合が過半になると重たい感じになるので、そこを意識して材料を決めました。

居間の天井の一角 珪藻土 左官仕上げの写真
木と珪藻土の見える面積バランスを確認したスケッチ
13.車座になって集える座卓が欲しい
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 大勢で使うためのサブの座卓は、温かな雰囲気を醸し出す無垢の木で作りたいと思いました。その座卓は普段はどこかに収納しておき、出し入れするので軽いことが必須です。検討の結果、杉材が比重が小さく(気乾比重0.38)強度もあるので、これも杉の巾接ぎ材で作ってもらうことにしました。ミズナラでできた座卓の横に並べるので、座卓のサイズと面取りの形状を合わせて統一感が出せればと考えました。

 座卓の収納は、座卓の脚を折りたたみ、居間の外壁とのすき間(W1000奥行き150)を利用して、Vレールを使って写真のように滑り込ますことにしました。

 座卓の高さは360mm。この座卓で使う座布団の厚さを決めるため、発泡スチロールを使って実験しました。食事がしやすいのは、座った時の座面高さが150mm(高低差210mm)位と確認できました。今まで皆さんに使ってもらっていた薄っぺらな座布団は、食事しづらかっただろうなと申し訳なく思いました。

結果、座ったときの沈みを考慮し厚さが170mm位の座布団(クッションと呼んだ方が良?)をそろえることにしました。12人くらいは座れるので人数分そろえ、その収納はソファーの横に収納BOXを作って納めることにしました。

脚が折りたたむことができる第2の座卓 の写真
第2の座卓を収納している写真
座卓で使う座布団(クッション)の写真
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14.バルコニーに木製デッキを張りたい

 まず、外部建具の敷居と木製デッキの高さをそろえることを考えました。そうするとバルコニーにスッと出ることができます。材種は、耐久性がありウッドデッキによく使われるウエスタンレッドシダー(ヒノキ科)を選びました。ここに、少し高めの椅子とテーブルを置けば、念願のバルコニーでの食事ができます。

居間のソファーからバルコニーを眺めたとき、ウッドデッキは水平なのであまり目につ来ません。そこで垂直なバルコニー手摺りに木の格子を取り付けて、木が目につくように考えました。

マンションの計画修繕の際は、床面のメンテのため木製デッキをめくる必要があるので、幾つかのパーツに分割して作ることにしました。

バルコニーのウッドデッキと垂直の杉格子の写真
パーツに分割しているウッドデッキの写真
15.絵を飾るスペースを作りたい
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 仕上がった内装の空いたスペースに絵を飾るのではなく、最初に絵を飾る場所を決めた上で内装を考えようと思いました。

絵を飾りたい場所にスッキリしたスペースの壁を設け、照明も考えます。結果、玄関と書斎に絵を飾ることにしました。

絵を飾った玄関の写真
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